ノルウェー語講師・青木順子さんのエッセイ > 2011
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旅の快感コミュニケーション

さて前回は、オーロラツアーについて書きました。

ノルウェーに興味を持った私は、会社勤めのかたわら語学学校でノルウェー語を
学び始めたのですが、本当に楽しかった思い出があります。余暇時間はほとんど
ノルウェー語教室の予習と複習をしていました。そしてノルウェーに行っては、少しでも
ノルウェー語を使ってみようと、鼻息荒くしていたのです(嗚呼、若いって素晴らしい!)

ホテルのチェックインでは、「日本から予約しましたJunko Aokiです」
(Jeg har betsilt fra Japan og heter Junko Aoki)とノルウェー語で披露。
すると、ノルウェー人は日本人の観光客がまさかノルウェー語を話すと思っていないので、
大げさに喜んでくれます。単純な私はそれだけで、「ふふん」と快感を得ていました。

こんなこともありました。お土産屋さんで、「Can I help you?」という英語の問いかけに、
「いいえ、見ているだけです」(Nei, bare kikker.)とノルウェー語で返したところ、店員さんが
混乱してしまったのです。まず英語でそれからノルウェー語で、「まさか日本人がノルウェー語を
話すと思わないから、びっくりしてわけが分からなくなったの」と心理状態を説明してくれました。
「単純を絵にかいたような」私はさらに「えっへん」と快感度がマックスに!

そうなんです、英語は今では話せて「当たり前」と思っている人多いですが、
ノルウェー語は違いますよね。

日本人はちょっとでも外国人が日本語を話すと「日本語、上手ですね」とよく誉めますが、
これは「日本語のように特殊で難解な言語を話すとは、異国の者なのにおぬし、やるな」
という意識が働いているかと思います。ノルウェー人も外国人がノルウェー語を話すと、
手放しに誉めてくれますが、それは「ノルウェー語みたいなマイナーな言語をわざわざ貴方が
話してくれるなんて!」というへりくだった意識があるような気がします。
「ありがとう」=Takk(タック)、一つだけで喜んでくれる素朴なノルウェー人が愛おしいです。

ただ、旅先でノルウェー語を使ってみると、快感ばかりではありません。私がちょっとノルウェー語を
話すと「とってもできる人」と勘違いされ、すごい勢いでノルウェー語の洗礼を受け、「??」となることも
しょっちゅうでした。すると、「もっともっと勉強しよう、みんなが言っていることが分かるようになろう!」と
学習意欲がさらにUP、という思考回路でした。

会話のコミュニケーションは、テニスのラリーにも似ているかと思います(テニスできませんが・・・)。
相手と自分のボールの応酬。思いがけず、相手を笑わせることができると、
「1本取りました!」の気分です。

と、会話で得られる快感は大きいのですが、言葉が分かると、新聞の見出しや看板の意味も
分かってくるようになります。歩いていて、「サルサ教室」の張り紙を見つけ、「ゲルマンな
ノルウェー人がラテンに憧れる?」とクスクス笑ったこともありました。言葉が分からないと、
文字は意味のない記号の羅列に過ぎませんが、分かるようになると、大げさかもしれませんが、
文字がキラキラと輝きを放ち、意味をもった存在として私の前に迫ってきます。う~ん、これぞ快感。

それから長期短期4回もノルウェー留学をしたのは、ひとえに「みんなの言っていること、
書いてあることを理解したい。そして私の言っていること、書くことを理解してもらいたい」
という欲求に突き動かされたからだと思います。

今日、ノルウェーへは再び「旅人」という立場で訪れる私ですが、「ノルウェー語、上手だね」
とおだてられて、鼻の穴をふくらます、という図式は昔も今も変わりありません。
私にとっては、おそらく一生続きそうな「カ・イ・カ・ン」なのです。

4月16日(土)のサロンでは、「旅とコミュニケーション」をテーマに扱う予定です。
詳細は、2月19日以降に、サイト上でご確認できますので、ぜひクリックしてください。

http://www.norway-yumenet.com