ノルウェー語講師・青木順子さんのエッセイ
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「出る杭は打たれる」ノルウェー版?~ヤンテ村の掟~

「出る杭は打たれる」ということわざは、いかにも日本的だなぁと思いませんか?

少しでも目立ってしまうと、持ち上げて一転してバッシングが起きるのは最近、顕著に感じます。と同時に、「ちょっとでも他人とは違うようになりたい」と個性や特質を磨こうとしている人がいる傾向もありますね。

僕は目立っちゃってる?

僕は目立っちゃってる?

さて戦前、ノルウェー・デンマークで活躍した作家の1人に、Aksel Sandemose(アクセル・サンデモーセ)がいます。デンマーク生まれですが、30歳になった時にノルウェーへ移住します。

昔の娘っ子のイメージ

昔の娘っ子のイメージ

たくさんの昔の作家が現代では忘れられている中、サンデモーセが今でも多くの人に覚えられているのは、彼が残したある「掟」が原因です。

1933年に発表した作品の中で、彼は主人公が住む「ヤンテ村」(Jante)の「掟」を記しています。引用してみましょう。

・お前は、自分が何者かであると思ってはいけない。
・お前は、私たちと同じくらいすごいと思ってはいけない。
・お前は、私たちより賢いと思ってはいけない。
・お前は、私たちより優れていると思ってはいけない。
・お前は、私たちより何かを知っていると思ってはいけない。
・お前は、私たちより上だと思ってはいけない。
・お前は、何かの役に立つと思ってはいけない。
・お前は、私たちを笑ってはいけない。
・お前は、お前のことを気にしている者がいると思ってはいけない。
・お前は、私たちから何か学べると思ってはいけない。

 ・・・引用していくうちに、段々と気が滅入ってきました・・・。恐るべし「掟」!

ちなみにこの「掟」は、「ヤンテ村の掟」(Janteloven)と呼ばれています。この作品はサンデモーセが育ったデンマークの小さな村をモデルにしていますが、同じような村は至る所にある、と作者の弁。

確かに、日本でもこの「ヤンテ村の掟」を実行している人、いるような感じもしますね。

この「ヤンテ村の掟」は世に出てから、すでに75年以上経ちますが、ノルウェーの新聞などを読むと、時々、「Janteloven」という単語を見かけることがあります。
政治家などの足を引っ張るような行為に対して、「あれは典型的なJantelovenが働いた」などといった例です。
では、ノルウェーでは未だに「Janteloven」が人々の行動に影響を与えているのでしょうか?

2月の「ノルウェーについて学ぶサロン」にゲスト講師になってくれたノルウェー人留学生は、「ヤンテ村の掟は、今ではそれほど社会に強く残っていません」と説明してくれました。
さらにノルウェー人の検証を得るべく、別の友人たちにもリサーチしたのですが、意見は一緒で、「昔ほどではない」という結果でした。
どうして?という問いに対して、昔に比べて現代では、他人が自分と違っていてもより「寛容」であり、また違っていることに「慣れてきた」と答えが返ってきました。そうよね、ノルウェー人は「寛容」だもんね、と納得。

いろんな人がいていい

いろんな人がいていい

さらに「都市化」の影響を挙げる友人もいました。たくさんの「移民」=外国人が住む都市の住民たちの影響が小さな村の住人たちにも影響を及ぼしている、と。今でも小さな村では、「みんながみんなを知っている」状態だそうですが、それでも以前に比べても「他人と違うこと」を認めている、との指摘がありました。

他人は他人

他人は他人

そうそう、答えてくれた友人の一人がもっと愉快な「掟」を教えてくれました。ノルウェーの有名な児童作家の「カルダモン・シティの掟」というものがあるそうです。

・他の人に迷惑をかけないで
・楽しく親切であること
・それ以外はしたいようにすればいいさ

 こちらの「掟」の方がノルウェー人的?と感じるのは私だけでしょうか。

この中でノルウェー人は2人だけ。分かる?

この中でノルウェー人は2人だけ。分かる?

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