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「あなた」との距離

たまには、本業の「ノルウェー語」に、ちなんだお話をしましょう。

 皆さんは、日々の会話で「あなた」という単語をよく使いますか?
おそらく、あまり使わない・ほとんど使われないのではないでしょうか?日本語では「あなた」というよりも、きちんと名前で「●●さん」と呼びかけるのが一般的です。なので、パーティなどで顔は知っているけど、名前が思い浮かばないという人とばったり会ってしまった場合、「あ、まずい!」と焦ってしまった経験はありませんか?

 こんな時、ノルウェー語ではシンプルにdu(ドゥ)「あなた」という単語を使って、何の問題もありません。
それで何度も救われました!おそらく向こうも日本人の名前は覚えられないと思うので、お互いに「du」を使って会話は円滑に進みます。

duで続く会話

duで続く会話

ノルウェー語を習い始めた時(もう19年も前です!)、実はこういうことを習いました。
「知らない人、年上の人にはduではなくて、De(ディ)という敬称を使います」。そうDeのDは大文字です
日本ではノルウェー語の語学書はそれほどありませんが、80年代、90年代前半に出版された語学書を見ると、確かに「De」が載っていました。「ふ~ん、Deね・・・」と頭の隅に軽く入れて、95年に初めてノルウェーに留学しましたが・・・。

Deなんか使わないわよ!

Deなんか使わないわよ!

誰も「De」を使っていません・・・。誰からも「De」で呼びかけられませんでした・・・。
完全に「du」だけで会話は成り立っています。
そんなこんなで「De」の存在を忘れかけていたところ・・・。

Deってなに?

Deってなに?

99年からオスロ大学に留学したのですが、そこで膨大な量のノルウェー文学を読むことになります。
「人形の家」で知られるイプセンを始め、文豪と呼ばれる作家たちの作品は「De」のオンパレードじゃないですか~。これは、昔のノルウェー人の方がよりフォーマルな、丁寧な言葉づかいをしていたということでしょうか?
答えは「はい」です。
昔の人は、きちんと「De」を使い、相手をファーストネームで呼び捨てにせず、きちんと「●●教授」と呼んでいました。今では、相手が大学教授ですら、ファーストネームで呼び捨てOKです。

教授だけど、誰もそう呼ばないね

教授だけど、誰もそう呼ばないね

・・・というのが、「De」をめぐる背景です。なので、私のノルウェー語レッスンでは、「“De”という形は存在しますが、現代ではほとんど使われません」と説明しています。

著名な言語学者ですが、何か?

著名な言語学者ですが、何か?

 さてなぜ今回、「De」について取り上げたかと言うと、とあるノルウェーの新聞に載った記事がきっかけでした。ノルウェーの研究者が、この「De」の変化について発表したそうです。研究者曰く、「Deを使うと相手に、“距離感”を持たれるように人々の意識は変わった」。同記事では、Deを好むと思われる高齢者にもインタビューをしています。82歳と87歳の女性たちは言葉遣いの変化を10年~15年前から感じ始めて、「Deを使われないことに抵抗はありません。むしろDeを使われると、よそよそしく感じます」と答えています。

 さらに記事には興味深い事例が載っていました。
現代のノルウェーでは、「De」を使うと、「皮肉」や「冗談」と受け止められるそうです。
「これ本当?」と身近のノルウェー人に確認したところ、「そうだね。Deとか言われると、自分がバカにされている感じがするね」と答えるではありませんか!
「敬称」だったDeがそんな風に変化するなんて、やっぱり言葉は「生きもの」です。
だからこそ、面白い。目が離せないぞ、ノルウェー語!
・・・と感じる日本人は私だけ?

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