ノルウェー語講師・青木順子さんのエッセイ > satoshiの記事
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クリスマスの奇蹟

昨年11月、こんな新聞広告がノルウェーの全国紙に掲載されました。
「孤独な未亡人で家族はいません。クリスマスイブに一緒に祝ってくれる人を探しています。報酬はちゃんと支払います。」

窓辺を照らす光

窓辺を照らす光

ノルウェーで「クリスマス」と言えば、家族や親せきと一緒に祝うとても大事なお祝いです。
それなのに、こんな広告が掲載されたことに、多くのノルウェー人は驚き、ショックを受け、マスコミは大きく取り上げました。

広告の主はReidun(ライドゥン)という89歳の女性。2年前に息子と兄弟を亡くし、彼女は本当に1人ぼっちだったのです。
連日の報道を受け、ノルウェー人の反応は早かったです。Reidunのもとには100通以上の「ぜひ我が家に来て一緒にクリスマスを祝いましょう」という手紙が届きました。Reidunによると、「スウェーデンやフィンランドのマスコミも取材に来た」とのこと。
彼女はたくさんの手紙を丁寧に読み、同じオスロに住んでいる親切な家族のもとで無事にクリスマスイブを祝うことができました。
そして今月の報道によると、やはり手紙をくれた別の親切な家族と、今年のクリスマスイブは過ごすそうです。とても晴れやかな表情が印象的です。

クリスマスマーケット

クリスマスマーケット

去年、私はこの記事を読んだとき、ノルウェー人がいかに「1人ぼっちのクリスマス」に心を打たれるか、そして何とか孤独な人を助けられないか、という強い思いに駆られるさまに、改めて「クリスマス」の持つ強い意味を感じました。

ノルウェー夢ネットが主催する「ノルウェーについて学ぶサロン」では、12月にノルウェーワッフルパーティを催し、ノルウェー人のゲストにクリスマスの過ごし方について話してもらいます。
時代ごとの流行はあると思うのですが、どのノルウェー人も、「クリスマスには家族や親せきが集い、おいしいディナーを食べて、プレゼントを交換し、リラックスします」とほぼ同じ内容を語ります。
「最近のクリスマスのトレンドは?」という質問に対しても、「特にない」とのこと。
それだけ、クリスマスは現代でも伝統が守られているお祝いなのです。

ですから、「家族で過ごす」という部分が欠落している人にとって、クリスマスは楽しみではなく、苦痛になるでしょう。
昨年、Reidunは「クリスマスイブは一人です」と声を上げました。これはとても勇気のいる行為だと思います。
昨年、マスコミが「孤独なクリスマス」に焦点を当てたお蔭で、今年も同じテーマが話題になっています。
「18歳以上のノルウェー人のうち10人に1人が1人クリスマス」という結果が、最新の調査で分かりました。
Reidunのような高齢者が孤独になってしまうのは、分かりますが、調査によると18歳~29歳の若者の1割がやはり1人クリスマスになるそうです。
ノルウェーは離婚率が高いですし、家族と祝えない事情がある人もいる、と想像できます。

クリスマスファッションのディスプレイ

クリスマスファッションのディスプレイ

ただ今年は、「1人クリスマス」を何とか防ごうと、ノルウェーの大手新聞が、「1人クリスマスの人」と、「1人の人を受け入れる家族」をマッチングさせるサイトを作りました。
「受け入れる家族」は、何人家族で、ノルウェーのクリスマス伝統料理でおもてなしします、など紹介文が書いてあります。少しでも「1人クリスマス」の人が減るように!と思わずにいられません。

人々がいつもよりもっと優しくなれる時期・・・・それが「クリスマス」なのかもしれませんね。

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